小説

ベルンハルト・シュリンク『朗読者』

「強制収容所」という最悪の過去に関しての記憶。善とはなんなのか?悪とは?そもそもそんなものは「ある」のか?よくわからない。しかし悲しみは、憎しみは、確かに「ある」。ハンナの記憶。元収容者の記憶。記憶の中の死者たち。死者たちは既に灰となり、…

円城塔「後藤さんのこと」

表題作「後藤さんのこと」をはじめ、「ガベージコレクション」や「墓標天球」など6編からなる短編集。 卒論の息抜きに、と買ったのだが、「息抜き」に円城塔を読もうというのはあまり理性的な判断だとは言えないということに読み出してから気づいた。読みに…

東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』

これは面白い。 今日から発売なので、さすがにネタバレ的な感想は控えるけれど、掛け値なしにおすすめできる。久しぶりに興奮で眠れなくなるほどの読書体験をさせてもらった。東読者はもちろん、セカイ系ファン、美少女ゲームファン、そしてSFファンは必読だ…

小説 OF THIS YEAR

ダ・ヴィンチ1月号は毎年恒例のBOOK OF THE YEARで、今年の総合1位は『1Q84』だそうです。ふーむ。短いですが村上春樹のインタヴューも載っていて、それによると、来夏刊行予定のBOOK 3では、「BOOK 1、BOOK 2ではできなかったことをしたい。内容的にも、…

森鴎外「舞姫」

舞姫は中学だか高校だかの時に現国の教科書で読んでなんだこりゃと思い現国教師にこの小説は嫌いですということを言ったら、そうかわかんないかぁと残念そうに言われてそのことがなんだかずっと心に引っかかっていて、いつか「わかる」ようになりたいなんて…

太宰治『パンドラの匣』

映画を観てなにやら釈然としない気持ちが残ったので原作をあたってみた。そしたら映画が小説のイメージをかなりのところまで忠実に再現していたのだということがわかってほぉおん、と感心。と同時に、映画版のあのポップさに収まらないある種のエロティック…

『1Q85』

村上春樹が『1Q84』の続編を執筆している、というのはどうやら本当のようだ。 http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009100501000031.html BOOK 1が1984年、あるいは「1Q84」年の4-6月、BOOK 2が7-9月だったので、続編のBOOK 3で10-12月で「1Q84」を終わらせる…

『1Q84』続編

村上春樹さん、「1Q84」の続編を執筆 : J-CASTニュース やっぱりか、と。早いのが意外。10年くらい間をあけるのかと思っていた。 まあこのニュースが本当に本当なのかというのはありますが。

Kazuo Ishiguro "Nocturnes"

夜想曲集の題名通り、夜と音楽とに関わる短編を5編収録。旅行中に読みました。カズオ・イシグロはたぶん面白いのだろうなと思いながらも今まで手をつけられていなかったけれど、読んでみたらやはり結構よかった。個人的に好みに合った作品であるという部分…

川上未映子『ヘヴン』@群像

川上未映子の新作「ヘヴン」が400枚一挙掲載というので久しぶりに「群像」を購入。「ヘヴン」を読んだらなんというか「ちゃんとした」小説になっていて吃驚。実に小説らしい小説。川上未映子は「わたくし率」や「感じる専門家」など、これまでの作品は詩…

男女逆転メロス/女同士の友情の不在について

今日は太宰治の生誕100年。さまざまなメディアで太宰が取り上げられていますね。 太宰といえば『人間失格』ですが、しかし人間失格を実際に読んだことがある、というひとは案外少ないのではないでしょうか。むしろ、ほとんどの国語の教科書に載っている『…

村上春樹『1Q84』

村上春樹は少なくともある時点で物語を語ることをやめた作家だと思う。作家が物語を語るのではなくて、村上は小説の中のモノに物語を語らせている。人→人の直接的なコミュニケーションをある部分で諦めて、モノとモノとの会話を聞き取らせるという間接的なコ…

綿矢りさ『インストール』

綿矢りさのデビュー作。このときなんと17歳。高校三年生。わーお。 こちらもまあまあ読める小説だとも思うだけれど、やはり芥川賞を獲った2作目『蹴りたい背中』のほうが断然よくできている。『インストール』は文体がなんともだらだらとしていてまあそれは…

綿矢りさ『蹴りたい背中』

綿矢りさが2004年に芥川賞を史上最年少(当時19歳)でこの『蹴りたい背中』で受賞したときは文芸誌以外の雑誌や、テレビなどでもかなり騒がれていたことを覚えている。金原ひとみ(当時20歳)との同時受賞に、当時素朴だった僕は文学業界のミエミエの話題作…

森見登美彦『恋文の技術』

モリミーこと森見登美彦の第6作。文通修業中の主人公=守田一郎がさまざまな人物に宛てて書いた手紙の文面のみによって構成されている、いわゆる書簡体小説。 最初から最後まで、主人公の手紙の文面以外の部分が全くないため、その手紙と「(主人公が生きて…

F.Scott Fitzgerald "Tales of the Jazz Age"

1922年に発表されたスコット・フィッツジェラルドの短編集。映画「ベンジャミン・バトン」のネタ元"The Curious Case of Benjamin Button"他、"May Day"、"The Diamond as Big as the Ritz"などの名編を収録している。 フィッツジェラルドの短編は良いのと悪…

分析、あるいは手紙

★モルグ街の殺人事件 (新潮文庫)作者: エドガー・アラン・ポー,Edgar Allan Poe,佐々木直次郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1951/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (23件) を見るエドガー・アラン・ポー『モルグ街の殺人』を…

"Phoney !!"

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)作者: J.D.サリンジャー,野崎孝出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/05/20メディア: 新書購入: 48人 クリック: 410回この商品を含むブログ (364件) を見るキャッチャー・イン・ザ・ライ作者: J.D.サリンジャー,村上春…