アカデミー賞授賞式、あるいは、「ダークナイト」について

今夜は就活のいろいろをやらなければならなかったのですが、BSで今年のアカデミー賞授賞式のハイライト版がやっていたので見入ってしまいました。いやあ、今年の式はとても面白かった。ミュージカル調の演出が為され、司会のヒュー・ジャックマンが歌に踊りに素晴らしい活躍。やっぱりエンターテイメントをやらせたらハリウッドはずば抜けている。
ところで、ヒュー・ジャックマンも言っていましたが、「ダークナイト」が作品賞にノミネートすらされないというのはどう考えてもおかしい。僕はあの映画は映画史に残る大傑作だと確信していて、興行的にも成功したし、批評家たちの評価も近年まれに見る高評価らしいと聞いていたので作品賞を獲れるのではないかと思っていたのですが、ノミネートすらされないというのではやはりコミックが原作の作品は差別されているとしか思えない……。
あの映画は、アメリカという国がある種神経症的に追及している問い=「正義とは何か」というテーマを扱っています。「闇の騎士(dark knight)」バットマンと「光の騎士」ハービーが、それぞれが「正義」を追求し悪と闘うが、ハービーはジョーカーというゴッサム・シティの闇(dark night)に呑み込まれ、自らの「正義」に迷いを抱えたバットマンもまた闇の前に敗北してしまう。ジョーカーという「超越的な悪」の前に、「正義」は為す術がない。非常にシビアで、恐ろしい映画です。僕は「ダークナイト」を観た時に「こんな映画が出てきてしまう時代なのか」ということに、戦慄を覚えました。
ダークナイト」の世界をあそこまで迫力あるものにしている大きな要因のひとつには、間違いなくジョーカーの超越性、底なしの狂気を、ヒース・レジャーが十二分に表現したということがあると思います。だから彼に助演男優賞をあげたのは、追悼のパフォーマンスではなくて、順当に評価された結果でしょう。ヒース・レジャーという若く才能溢れる俳優を失ったのは、ハリウッドにとって大きな損失です。なんとも"poor son of a bicth."という感じ。
「スラムドッグ」と「Milk」は観なければね。映画って面白いなあ。