電脳コイル

1話から最終話までを1日で一気に見ました。感想は「まあまあ面白かった」くらいでしょうか。「手触りのある<現実>と、メガネに映る<仮想空間>が二重写しになっている」というその設定自体も特段斬新なものであるように思えないし、ストーリーはウェルメイドですが響くものがありませんでした。テンポとか演出とか音楽とかも全然悪くはないのですが、かといってすごく良いところがあるかというと、ひとつも思いつきません。
視聴者が観ているのは常に「メガネを通して視える世界」である、というところを利用して、物語世界の根本的なところにトリックを仕掛けたりしていれば面白かったのだけれど。というかそれを期待して最後まで観ていて、結局何も起きず拍子抜けしました。
構造的な話をすると、そもそも、カタい<現実>なんてものありゃしないんだ、という今日この時代に、現実とヴァーチャルという二項から物語を立ち上げようというのがキツいのではないか。「すべての現実はヴァーチャルだしすべてのヴァーチャルは現実です」というのはもうみんないい加減わかっているので、だからどうしたんだ、だったらどうするんだ、という部分で勝負しないと物語として突出できない。リアルの不確かさ、多重さはもう身に沁みてわかっているのです。リアルのゆくえに、リアルを決断することに、感心が、感銘が、感動があるのです。のですよ。