ディア・ドクター

「ゆれる」、「蛇イチゴ」などの西川美和の監督・脚本による、笑福亭鶴瓶主演の山間の過疎村を舞台にした映画。
「ゆれる」ではとにかく「表情に語らせる」という手法が印象的だったけれど、「ディア・ドクター」でもその手法がとられていた。ただ、「ゆれる」では狂気や嫉妬、憎悪とかが表情であらわされていたけれども、「ドクター」では苦悩、忍耐、信頼や諦めなどもうちょっと渋めな感情で物語を見せていた。また、「ゆれる」では物語の核心にあたる部分が最後まで曖昧なまま進んでいくというある種の藪の中的なサスペンスが、映像のテンションをずっと高く保っていたけれども、今回はサスペンス要素は弱めで、そこらへんもやっぱり渋い。日本映画の独特の良さというものがもしあるとしたら、恐らく「ディア・ドクター」はそれを体現した作品だと思う。
個人的には「ゆれる」のほうが好きだと感じたけれども、たぶんそれは僕がまだ20年とかそこらしか生きていなくて、年配の役どころの絶妙な感情とかをうまく味わえなかったからなんだろう。おそらくかなりいい映画です。