川上未映子『ヘヴン』@群像

群像 2009年 08月号 [雑誌]
川上未映子の新作「ヘヴン」が400枚一挙掲載というので久しぶりに「群像」を購入。「ヘヴン」を読んだらなんというか「ちゃんとした」小説になっていて吃驚。実に小説らしい小説。川上未映子は「わたくし率」や「感じる専門家」など、これまでの作品は詩と小説の淡いみたいなしかも短いものが多くて、長くて「乳と卵」の中篇200枚くらいだったからあんまり長いのを書く力がないのかと思っていたのだけど、こういうのをしっかり書いてきたというのはちょっと今後に期待大です。「ヘヴン」自体はそんなに優れた小説だとは思わないけれど、しかしところどころに独特のリズムというか言語感覚が垣間見える箇所があってそこにはやはり引き込まれる。朗読したらとてもよさそうだと思ったんだけど無理かなあ。全体とは言わない、一部分だけでもいいからワセブンみたいに付録CDとかつけてくれないだろうか…。
「ヘヴン」以外では安藤礼二苅部直松永美穂諏訪哲史での座談会「『1Q84』をとことん読む」が面白かった。『1Q84』発売後は雨後の竹の子のようにこの手の座談会企画がいろんな雑誌で組まれているけれども、この「群像」の座談会が少なくとも僕が読んだ中では一番質が高かったように感じた。松永と安藤が村上作品における女性の描かれ方に関する問題に触れている箇所があって、できればそこをもうちょっと掘り下げて欲しかった。
ところで五大文芸誌の「読んでたら頭よさそうランキングベスト3」をやったら1位はもちろん「新潮」だけれど、2位は「群像」で3位が「文学界」でおkだろうか。新潮の1位は鉄板だろうけど、2位3位は議論の余地があるかも。ちなみに発行部数は文芸(20000)>文学界(12000)>新潮(11500)>すばる、群像(8000)らしい。発行部数でこれだから実売はもっと少ないだろう。悲惨だなあ。