横書きで読む詩

先週ぐらいに古書店岩波文庫の『アメリカ名詩選』を買って、それからずっとバッグの中に携帯してちょいちょい読んでいるのですが、ようやくちょっとずつよさがわかってきました。といっても僕は詩学を全然学んでおらず、韻律やらの規則も全く知らないので、詩に対する感性は知れているのですが…。
それでもこれなんかは割とわかりやすくて好きです↓

Preludes
T.S. Eliot


I


The winter evening settles down
With smell of steaks in passageways,
Six o'clock.
The burnt-out ends of smoky days.
And now a gusty shower wraps
The grimy scraps
Of withered leaves about your feet
And newspapers from vacant lots;
The showers beat
On broken blinds and chimney-pots,
And at the corner of the street
A lonely cab-horse steams and stamps.


and then the lightning of the lamps.
(冬の夕暮れが腰をすえる、
路地裏のステーキの匂いとともに。
六時です。
煙たい日々の燃えのこり。
それから吹き降りの夕立に、
煤まみれの枯葉のくずや、
空き地からきた新聞紙が
しつこく足にまといつく。
雨脚がこわれたブラインドや
煙突の先に叩きつけ、
街の角では馬車馬がただ一頭、
湯気を吐き吐き足踏みをする。
それから街頭に灯が入る。)

どこかとても寂しい感じのする、都会の夕暮れの風景を描いた詩で、韻がうまいからリズムが軽いですね。こういうリズミカルで描写的な詩はいいですね。あとはEmily Dickinsonの詩も、まるで山間の集落の冬の朝の空気のような、張り詰めたそして清浄な精神を感じて好きです。
ところで、詩に限らず英語圏のこういう古く高名な文学作品というのは、かなり多くがgoogle bookで読めますね。僕は古いフェティッシュを引きずっている人間なので、小説はちょっとPC上では読めないのですが*1、詩に関しては特に問題なく読めるようです。先日も与謝野晶子の『みだれ髪』をどっかのサイトで読みました。
こういうデジタル・データ化の流れというのは基本的には良いことだと考えますが、いろいろ考えさせられます。今後の人文系の知をめぐる制度の有りようとか、かなり根本的に配列されなおしていくんじゃないかな、とか。あるいはただ崩壊して屍拾うものナシなのかもですが。

*1:Alice in Wonderlandを読もうとして挫折