F.Scott Fitzgerald "Tales of the Jazz Age"

Tales of the Jazz Age, Large-Print Edition
1922年に発表されたスコット・フィッツジェラルドの短編集。映画「ベンジャミン・バトン」のネタ元"The Curious Case of Benjamin Button"他、"May Day"、"The Diamond as Big as the Ritz"などの名編を収録している。
フィッツジェラルドの短編は良いのと悪いのでかなり差があって、"Rich Boy"や"May Day"などの米文学史上に燦然と輝く名編を残している一方で、ハリウッド時代に書いた短編にはとてもじゃないが読めたものではないようなものが多い。この短編集はというと、結構粒揃いだと思う。この集の中から個人的ベストをひとつ選ぶとしたらもちろん"May Day"、とは単純に言い切れず、他にもMasterpieceと呼ばれる作品が何篇かあるし、ちょっと選べない。発表されたのが彼の文体の美しさがその絶頂にあった時期だっただけあり、どの編も精緻にして大胆、見事にコントロールされていて、まさしく華麗だ。
映画「ベンジャミン・バトン」は、短編とは「老人の姿で産まれ、徐々に若返っていく男」というアイディアが共通しているだけで、筋は全然違っている。映画はフィッツジェラルドの他の作品からシーンや登場人物をいろいろ引用していて(たとえば、恋人の名前「デイジー」や、桟橋から遠くを見つめるシーンはグレート・ギャツビーからのものだと思う)、実は「(フィッツジェラルド)マニアにはたまらない」系の映画なのかも。
ところでこの本の表紙の肖像はスコットの妻ゼルダがモデルなんだろうか?美しいし迫力があってとてもいい絵だと思うのだけど、装画が誰なのか書いてなくて詳細がわからない。残念。