考え事

原田曜平『近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」』

内容の要約; 若者(現在10代〜20代後半くらいまでの、「携帯電話世代」)の関係性は、「空気を読む」ことが最も重要な「新村社会」とでも呼ぶべきものになっている。その原因として考えられるのが、ケータイメールの普及やSNSの流行などによる人間関係のネ…

排除すること、棄て去ること

「内包社会から排除社会へ」。フーコーの「死の中に廃棄する」という言葉を思い出す。あるいは「自己責任」という言葉。 ジグムント・バウマンは次のように自問する。シングル・マザーとアルコール中毒者、あるいは不法移民と学校中退者といったような、はな…

What's the harm?

ジェンダー系の授業で、ゲスト・スピーカーとして来てくださったゲイのアメリカ人Douglasさんのお話を聴く。 Mr.Douglasは米のIT系企業の六本木にある日本支社で働いている。生まれはBostonで、4年ほど日本で働いており、日本人の男性ともう19年間も良好…

規律訓練から自己啓発へ

監禁の環境は危機にある、とドゥルーズは書いた。規律訓練の弱体化。 しかし規律訓練されることはさまざまな水準のさまざまな意味で必要である。 誰も規律訓練してくれないのならば、自分でするしかない⇒一億総自己啓発化。 監視者の視線を呼び出し、規律、…

決断としての愛

僕が昨日の飲み会でちらっと言ったことを思想地図の宮台真司×東浩紀対談で印象深かった部分を引用して補足しておく 宮台:……合理的に考えれば、目の前にいる相手よりももっと良い相手がいるに決まっていて、必然性を信じるということにムリがあります。とこ…

「民主主義2.0」という名前ってどーよ

あずまんが最近ぶつぶつつぶやいている「民主主義2.0」というのは彼が来年に出す本のタイトルらしい。どうも情報技術によって一般意志を実装できるのではないか、という途方もない試みだとか。注目。 で、内容はさておき、「民主主義2.0」というのは名前とし…

労働と承認

労働にはふたつの側面がある。 (1)収入を得る手段 (2)承認を得るステージ:アイデンティティに関わる側面 どちらをどれくらい重視するかによって、労働をめぐる問題に関する議論というのは全く変わってくる。 マルクスは労働とは本来、人間を人間たら…

「否定」しない思想

「ジェンダー入門」とネトウヨ君 - ohnosakiko’s blog こういう授業はいいなあ。批判から入るのではなくて、学生それぞれが普段の生活や、さまざまな表象、言説に対してなんとなく感じているかもしれない違和感について、考えるきっかけを与える、というやり…

人間と時間

経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版 生−政治が派手に失敗している。統治の失敗。 なぜ失敗したのか? 人間には限定的合理性しかないから?統治の計算の射程が短すぎたから? 僕はそうではないと思う。個人の時間と国家の時間がずれていること…

「自由である」を考える+宮台先生を応援

卒論の2度目の中間発表に向けての作業中。前回から問題意識をかなり変えている(というか前回は問題意識がはっきりしていなかった)ので、ほとんど完全に書き直し。『波状言論S改』の東×大澤対談「ふたたび、自由を考える」で提起されている、「環境管理型…

統治性は何を計算するか

貧困=努力不足、自己責任という言説、そこにはたとえ努力不足、能力不足でも、そこそこに暮らせるように社会を設計する、という発想が欠けている。そもそも本当に努力が足りていないのが貧困の原因なのか?わからない。しかし努力は足りていないはずである…

再帰的近代と自傷

現代若者論という授業の一環でジュニアフェローの方による講義を受けました。タイトルは「自傷行為体験者の語りから探る現代日本社会の生き辛さ」。フェローの方は、リストカットを関心の中心において研究してきた方だそうです。 リストカットをはじめとする…

ジル・ドゥルーズ「管理社会について」

『記号と事件』に収められているドゥルーズの「追伸―管理社会について」を読んで考えよう!という楽しいレジュメ。 ◇追伸―管理社会について ○「管理社会」 controlled societyとは? p.349 フーコー/ドゥルーズの権力の様態の3分類 1.君主型:〜中世に発達…

今週の「朝生」雑感

今週の朝まで生テレビは面白かったよ、と言う話 パネリスト: 赤木智弘(フリーライター、34) 東浩紀(東京工大特任教授、批評家、38) 雨宮処凛(作家、反貧困ネットワーク副代表、34) 小黒一正(世界平和研究所研究員、経済産業研究所コンサルティ…

赤木論文

授業の課題で赤木論文を読んで感想を(ry というのを書きました。 「丸山眞男」をひっぱたきたい 非常にショッキングな内容の論文だ。私はこの赤木論文が『論座』に掲載され話題になっていた際に読んだが、今日また改めて読み直してみてそう感じた。この論文…

「一生。」

瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん』4巻に、主人公江古田ちゃんの「だれにも気休めを言わない友達」である友人Mのこんな話があった。 パーティ?あるいは合コン?会場にて。江古田ちゃんと友人Mがふたりで座っているところに冴えない感じの男が所在なげに近…

リアリティの変質

遺伝子とかそこらへんまわりの技術が発展して「自分がだいたいどんくらいの確率で病気になるのか」がわかるようになったら保険業界はダメージを受けるのかそれとも別にどうってことないのかについて友人とちょっとした議論をしました。僕は保険やばい派で友…

セクシュアリティ・婚姻・親密性

0.レポート概要 このレポートでは、セクシュアリティと婚姻に結びつきかたの近代から今日にいたるまでの有りようについて、フーコーの『知への意志(性の歴史 第一巻)』での議論の、そのうちとくに婚姻の装置について論じた箇所と、ギデンズの『親密性の…

なにがこうちくされるのか

ゼミで「日本においてハゲはなぜあのような扱いなのか」という話題になりました。 アメリカとかヨーロッパとかでは禿頭はそこまでひどい扱いではないように思います。 なぜ日本においてはあのような扱いなのか? 構築主義的答え:そういうことになっているか…

アカデミズムは復活なんてしないよ

車は買わないが勉強はしている学生たち 重箱の隅をつつくようなことなのかもしれないけれど、ちょっと気になったので書いておきます。 そしてもう一つ、このランキングからは重要な変化が読み取れる。 「語学・資格試験」と言う項目が、三世代の中で もっと…

男女逆転メロス/女同士の友情の不在について

今日は太宰治の生誕100年。さまざまなメディアで太宰が取り上げられていますね。 太宰といえば『人間失格』ですが、しかし人間失格を実際に読んだことがある、というひとは案外少ないのではないでしょうか。むしろ、ほとんどの国語の教科書に載っている『…

「この私」と遺伝子操作

「成熟とは自分には選べなかったことを自ら選び取ることである」というような言葉があります。誰が言ったかは忘れましたし(きっとバーナード・ショーでしょう)*1うろ覚えの引用ですが、言わんとすることはわりあいはっきりしています。つまり、我々は、人…

一般意思についてのメモ

一般意思とは何か 個人のそれぞれの意思=個別意思 一般意思は個別意思の集合ではない 個別意思の集合は全体意思 全体意思は個別意思と必ずしも一致しない 多数派が少数派を押さえ込む それは真の民主主義ではない 一般意思は個別意思と齟齬をきたさない だ…

人間的な、不足なく人間的な…… ;セイバーヘイゲン「バースディ」について

いわゆる生命倫理に関して考える授業で、SF作家フレッド・セイバーヘイゲンの「バースディ」という短編についての文章を読みました。その文章が誰によるものか先生に聞き忘れたのでわからないのですが結構面白かったのでちょっと引用してみます。かなり長く…

便利/管理/隔離

GIGAZINEを読んでいたらこんな記事を見つけました。 総務省、インフルエンザなどに感染した人に近づくとメールで知らせる仕組みを実験へ - GIGAZINE なんともやばい世の中になってきたなという気がします。別にプライバシーがどうのこうのということではなく…

wonder

「我々が言葉を話すのではない。言葉が我々を話すのだ。」 これを言ったのは誰だったか忘れてしまったけれど、なかなかに真理だ。 ならばこうも言えるだろう。 「我々が秩序を生きるのではない。秩序が我々を生きるのだ。」 しかし詩は言葉を攪乱する。言葉…

欲望・行動・セクシュアリティ

ゼミでの雑談でジュディス・バトラーの話になり、その流れでペドフィリアを承認すべきかどうかについての話が出てきました。 僕は基本的に同性愛も両性愛も、インター・セックスであることもトランス・セックスであることも差別されることなく全面的に承認さ…

【人間/身体/環境】

今日は社会倫理学の授業で遺伝子治療に関しての倫理問題についてのお話があり、大変興味深いものでした。 「遺伝子いじるのはやめとけ」という立場のひとびとの主張のうちのひとつに、以下のようなものがあります(というか僕がなんとなく思いついただけです…

ジャック・デリダ『歓待について』

本書は96年におこなわれたデリダのセミネールの一部の講義「異邦人の問い:異邦人から来た問い」と、「歓待の歩み=歓待はない」をそのまま採録したものに、セミネールに出席していたアンヌ・デュフールマンテルによる序文「招待」を加えたものの翻訳。訳者…

「編集する」ということ

いま書店に並んでいるyomyomに平野啓一郎が「すべてが「不滅の小説」」と題して、今日の小説、メディア、webを巡って4ページの短いエッセイを書いているのですがこれがかなり密度が濃く質が高いものなのでぜひ読んでみてください。ちょっと引用してみます。…